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つくばサミット弾圧救援会のブログ

5月24日早朝、私たちの仲間Aさんの自宅に突然押しかけてきた茨城県警つくば中央署は窓ガラスを割って強引に侵入し、家宅捜索をした上にAさんを建造物侵入容疑で逮捕していきました。私たちは茨城県警に対し強く抗議し、連れ去られたAさんの一刻も早い解放を求めます。 → 6月14日に解放されました!                 連絡先  メール tsukubakyuuen“あっと”gmail.com        ツイッター つくばサミット弾圧救援会 @tsukubakyuuen  

勾留取消請求書

 

建造物侵入被疑事件

被疑者 ×× ××

 

勾留取消請求書

 

2016年6月12日

 

水戸簡易裁判所 刑事係(令状担当係) 御中

 

弁 護 人   吉 田  哲 也

 

現在,頭書事件について被疑者は茨城県警察水戸警察署留置施設に勾留中であるところ,勾留の理由及び必要性はなくなったので,勾留の取り消しを請求する。

 

 

第1 請求の趣旨

   被疑者に対する勾留を取り消す

との決定を求める。

第2 請求の理由

1 本件被疑者には犯罪の嫌疑がなく,また勾留状の被疑事実に拠ったところで本件被疑事実には起訴価値がない。したがって勾留の必要性がない。

⑴ 勾留状記載の被疑事実は,被疑者が3月18日に,つくば国際会議場1階エントランス部分において,同エントランス部分に入館したG7参加国の大使館員らに対し”Unwelcome G7”等と記されたボード(大きさはA3版×4枚程度,以下,「本件ボード」という)を両手に掲げてアピール行為をなした所為をもって,建造物侵入に該当するというものである。

⑵ア しかしながら被疑者は,当時一般開放されていた同会議場北東入口から入館したものである。そして被疑者は,本件ボードを隠すことなく小脇に携行したまま上記入口から入館したものであるところ,入館に際して誰何,用件の確認,制止等を受けることなく,平穏に同会議場に入館している。

イ また被疑者が立入った同会議場は人の起臥寝食がなされる住居ではないのだから,個人の人格的尊厳の核心をなす住居権あるいはプライバシー権等の侵害が問題となるものではない。また被疑者は,自己とは無関係の会議あるいは展示等が開催されている会議室,やブース等の部分に立入って上記所為をなしたものでもないのだから,それら会議あるいは展示の主催者参加者の集会の自由等を侵害するものでもない。

被疑者が立入ったのは一般に開放され自由に出入りすることができる同会議場1階エントランス部分であるのだから,たとえ同会議場管理者の管理権が問題となるにしても,施錠された場所あるいは立ち入り禁止とされている場所に比して管理者の管理権保護に対する期待は自ずから小さいものである。

ウ そして被疑者は上記ア記載の同会議場北東入口からせいぜい10m弱程度立入ったにすぎず,さらに立入った時間は極めて短時間であり,その後やはり開放されていた前記北東入口から自ら同会議場を退出している。

エ 被疑者が同会議場1階エントランス部分でなした所為は前記⑵記載のアピール行為であり,これが政治的意思表明たる表現行為であることは自明であり,憲法第21条1項の「その他一切の表現の自由」の保障の下にある。一般に開放された場所においてボードを掲げてアピール行為を為すという表現態様は,マスメディアへのアクセスが容易ではない個々の市民にとって自己の政治的意思を表明するための重要かつ効果的な表現方法であり,民主主義国家においてはとりわけ強く保護されるべきである。

 

オ したがって,被疑者が本件ボードを隠すことなく携行して入館していることをも併せ考えるのであれば,公衆に解放されているデパート内になんら憲法上の保障を受けることのない窃盗行為を為す目的で,かつその目的を秘して立入るケース等と,前記被疑者の本件所為とを同列に置いて論じることは失当である。

カ そうであるのだから,当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れるのであれば,本件被疑者の立入り行為が法秩序全体の見地から許容されるものであること(最高裁昭和48年4月25日大法廷判決 刑集27巻3号418頁)は至極当然であると言わなければならない。本件被疑事実においては「正当な理由」が存在するのであって,そもそも建造物侵入の構成要件を満たすものではない。

⑶ア 仮に本件被疑事実が建造物侵入の構成要件に該当するとしても,被疑者は本年5月に開催されたつくばサミットに対するアピール行為を行っていたのであり,この政治的意思表明たるアピール行為は高度の公共性と公益性を有するものであって,優越的地位にある表現の自由の中にあっても特に強く保護されるべきものである。そして本件被疑事実とされる所為が上記アピール行為の一環ないし補助手段としてなされたものであることもまた明らかである。生じた実害が殆ど認められないことも併せ考えるならば,本件被疑事実とされる事象に刑事罰をもって応じることは,憲法に反すると言わなければならない。本件被疑事実の違法性は阻却される。

イ 少なくとも前記⑶のように「侵入」の程度,形態はごく平穏でありかつ極めて短い時間に留まる軽微なものであり,実害は殆ど生じていないというべきである。本件被疑事実とされる事象は,法秩序全体の見地からこれを見るときに建造物侵入罪もって処罰しなければ社会生活上許せない,というほどの違法性があるものとは認められない。したがって本件被疑事実とされる事象には起訴価値がなく,勾留の必要性が認められない。

2 勾留の理由も,刑事訴訟法208条2項の「やむを得ない事由」も存在しない。

  勾留延長決定後の勾留状の記載によれば,「押収証拠物の解析未了」,「通話履歴の精査未了」及び「被疑者取調べ未了」の3点が勾留延長に必要な「やむを得ない事由」として挙げられている。

⑴ 裁判官は勾留の理由の存続の有無を常に職権で判断しておく義務がある(新関雅夫ほか『増補 令状基本問題 下』第1版,判例時報社,2013,124頁参照)。

⑵ まず,被疑者が逃亡するおそれは皆無である。

ア 本件被疑事実とされる事象は何ら罪となるべきものではなく,仮に罪に問われうるとしても極めて軽微であって起訴価値もないのだから,被疑者が処罰を免れるため逃亡する事態などおよそありえない。

  イ また本件被疑事実とされる事象の直後,被疑者は,つくば中央警察署警備課所属の警察官らから公道上で旧戸籍名を呼ばれて呼び止められ事情聴取を求められた際に,上記警察官らが本件ボードを写真撮影することに承諾を与えている。しかも被疑者はそれから2カ月余りも勾留状記載の現住居で居住を継続し転居することも行方を眩ますこともなかった。

   ウ 上記の事実から,被疑者に逃亡の必要も意思もないことは明らかである。

⑶ 「押収証拠物の解析未了」及び「通話履歴の精査未了」とあるが,

ア 捜査機関は本件勾留に先行する逮捕と併行して,被疑者自宅からパーソナルコンピューター,SDカード,携帯電話機等を押収している(附言するに,上記押収にかかる捜索差押令状には被疑者をして「黒ヘルグループ活動家」と記載したうえで,差し押えるべきものとして「黒ヘルグループ及び同派傘下団体若しくは対立するセクト等の「規約」,「会議録」,「闘争計画等に関する文書」等が列挙されていた。しかしながら,逮捕の初日につくば中央警察署において被疑者の取調べを行った茨城県警察本部警備部所属と思しき「大下」と名乗る警察官は,被疑者に対し『黒ヘルグループって知っているか?まあ,知っているわけないよな』と言い放っている。笑止千万であり言語道断である)。

ところで勾留状記載の被疑事実によれば,本件被疑事実とされる事象に「共犯者」はいないとされている。そうであるから,被疑事実の計画,目的等に関する押収物以外の「証拠」が被疑者の自宅以外に存在する蓋然性もなければ,その存在さえ確かではない「関係者」なる者と釈放された被疑者とが通謀・共謀して上記「証拠」を隠滅する蓋然性も存在しない。

イ また動機等の重要な情状事実についても,「押収証拠物の解析」であるとか「通話履歴の精査」を行うまでもなく,通常の判断能力を有する一般人であれば被疑者がなした表現行為の内容から容易に理解判明する。このうえ「解析」及び「精査」を行う必要はない。これらをなさねば解明できない事実とは,本件被疑事実の重要な情状事実等と何らの関連性もない被疑者の思想信条や交遊関係等の警備情報でしかないが,そもそも犯罪捜査に名を借りた警備警察活動を許容すべき理由は一切ない。

ウ 何よりも前記ア記載の押収がなされてから既に20日間が経過し,かつ勾留の満期も近づいている。検察官が勾留延長請求の理由とした「解析」も「精査」も,とっくに終えていなければならない筈である。百歩譲って本請求から一両日中では未だ「解析」あるいは「精査」が終了しないというのであれば,そもそも検察官において法定の勾留期間中に起訴不起訴の判断をなすことは不可能な事態なのであるから,被疑者を釈放しなければならない筈である。いずれにせよこれ以上被疑者の身柄を拘束する理由も必要もない。

⑷ また,「被疑者取調べ未了」とあるが,逮捕・勾留の目的は,被疑者を取調べることではなく,被疑者の逃亡あるいは罪証隠滅を防止することに尽きる。被疑者は取調を拒否する意思を明確にしている。「取調べ未了」を理由として勾留を継続することは,警備情報収集のための捜査機関の時間稼ぎと自白の強要に留まらず,被疑者に身体的精神的負担を与えて「見せしめ」にし,被疑者のみならず広く市民の表現活動と政治的意思表明とに対する委縮効果を及ぼすものでしかなく,違法不当である。

    被疑者の身柄を拘束する理由も必要はない。

⑸ 以上のとおり,最早本件においては勾留の理由も刑訴法208条2項の「やむを得ない事由」も存在しないことは明らかであり,本件勾留は取り消されるべきである。

 

3 結語

⑴ 以上のとおりであるから,速やかに本件勾留を取り消し,被疑者を釈放すべきである。

⑵ なお,前記2⑴記載のとおり,裁判官は勾留の理由の存続の有無を常に職権で判断しておく義務があるのであるから,検察官が勾留延長請求の理由として挙げた「押収証拠物の解析」及び「通話履歴の精査」の状況については直ちに職権をもって調査し,調査結果によっては職権をもって速やかに本件勾留を取り消されるよう併せて上申する次第である。

 

以 上